(引用:東京新聞)
中古車販売大手の「ビッグモーター」が、保険金の水増し請求を行っていた事実が発覚し、問題となっています。
その中でも特に問題視されているのが、保険会社・損保ジャパンとの「癒着」です。
ビッグモーターと損保ジャパンがお互いに「持ちつ持たれつ」の関係だったのでは?という声が多く聞かれます。
ビッグモーターと損保ジャパンはどのような関係性なのでしょうか?
癒着が疑われている理由について詳しくお伝えしていきます。
Contents
ビッグモーターと損保ジャパンの「癒着」が疑われる理由6選
(引用:東京新聞)
①保険の契約件数は損保ジャパンが1位
ビッグモーターでは、下記7社の保険を取り扱っています。
・損害保険ジャパン株式会社
・東京海上日動火災保険株式会社
・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
・三井住友海上火災保険株式会社
・ AIG損害保険株式会社
・共栄火災海上保険株式会社
・日新火災海上保険株式会社
多数の保険会社が乗り合っているビッグモーターですが、店舗ごとに顧客へすすめする保険会社が決められており、上記7社の中で保険の契約件数が最も多いのが損保ジャパンです。
損保ジャパンはビッグモーターの代理申請会社であり、シェアは圧倒的。収入保険料は120億円と言われています。
下記画像は、ビッグモーターのホームページで「自動車保険販売方針」として掲載されているものです。
(引用:ビッグモーターホームページ)
画像から、全体の約60%の店舗で損保ジャパンの保険をすすめていることがわかります。
内部告発のあった酒々井店も、損保ジャパンの保険の取り扱い店舗です。
取り扱い店舗が多いということは、ビッグモーターと損保ジャパンとの業務上の接点が多くなるということですが、両者の接点はこれだけではありませんでした。
②損保ジャパンはビッグモーターへ37人もの出向者を出していた
損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上がそれぞれビッグモーターへ出向者を出していたことがわかっていますが、損保ジャパンだけが突出して多いことが癒着疑惑を深めています。
各社の出向者数は以下の通りです。
・損害保険ジャパン株式会社…37人
・東京海上日動火災保険株式会社…3人
・三井住友海上火災保険株式会社…3人
損保ジャパンだけが明らかに多いことがわかります。
出向期間と出向先での業務については以下の通りです。
・損害保険ジャパン株式会社…2011年~2023年3月 営業・板金塗装部門
・東京海上日動火災保険株式会社…2020年4月~ 営業部門
・三井住友海上火災保険株式会社…2017年4月~ 板金塗装部門
損保ジャパンと三井住友海上には、車の修理を担当する「板金塗装部門」に出向者がいたことがわかっています。
さらに、FNNによると、損保ジャパンには
保険金の不正請求が横行した時期に、板金塗装部門の担当部長を務めた出向者もいたという。
(引用:FNNプライムオンライン)
損保ジャパンは「不正を認識していた出向者はいない」とコメントしていますが、出向者の中に板金塗装部門の担当部長がいたにも関わらず、今回の不正を全く知らなかったというのは無理があるのではと思います。
③ビッグモーター元副社長は過去に日本興亜損保(現:損保ジャパン)に在籍
7月26日に引責辞任したビッグモーター創業者の長男・兼重宏一氏は、2011年4月から2012年6月の間、損保ジャパンの前身の1社である日本興亜損保に在籍していたことがわかっています。
そして、損保ジャパンがビッグモーターへ出向者を出したのは、ちょうどこの2011年からです。
日本興亜損保は2010年4月に損保ジャパンと経営統合し、NKSJホールディングスの傘下へ入っており、その後2014年に合併しています。
この入社・出向の関係から兼重宏一氏が架け橋となり、損保ジャパンとの強い癒着関係を作り上げたと言って間違いないのではと思われます。
外部弁護士の報告書では、兼重宏一氏は「不正を引き起こす土壌をつくった」とも指摘されています。
④損保ジャパンは水増し請求疑惑が未解決のまま修理紹介を再開
損保ジャパンを含めた大手3社は、ビッグモーターの水増し請求についての内部告発を受け、2022年2月以降に調査を開始しました。
その結果、全国に33あるビッグモーターの整備工場のうち25の工場で80件以上の水増し請求が発覚。
その後、保険会社は事故車両の修理紹介をストップし、ビッグモーター側に自主調査を要請。その自主調査においても、水増し請求が多数あったことが判明しました。
水増し請求について組織的な関与を疑った保険会社側は、さらに詳しい追加調査を要請したものの、ビッグモーター側は「工場と見積作成部署との連携不足や、作業員のミスなどによるもの」「意図的なものでない」と組織的な関与はないと整理したのです。
本来ならばこれに対して再度調査を求めていくべきところですが、保険会社の足並みを乱したのが損保ジャパンでした。
損保ジャパンは、ビッグモーター側の説明を鵜呑みにして停止していた修理先紹介をいち早く再開させたのです。
この理由について東洋経済から損保ジャパンへ取材をしたところ、
「組織的な不正の指示がなかったことを確認できたため」
「(事務の)仕組みや作業員などの技術力不足が当該事象の真因であることから、全国的に同様の事象が発生しているとの認識のもと、会社として全社的な再発防止策を速やかに実施していることが確認できたため」
という回答があったのだとか。
そして、追加調査を求め続けた東京海上日動と三井住友海上に対しては、この2社の自賠責保険を扱わないようにという通達がビッグモーター社内で出されたことがわかっています。
損保ジャパンは、水増し請求についての調査が明らかに不十分であるにも関わらず、問題の早期幕引きに加担することで自賠責保険料の収入を独占したということです。
この修理先紹介再開の判断について、後に損保ジャパンの白川儀一社長は、「判断があまりに軽率だった」と述べています。
この事実だけでも、ビッグモーターと損保ジャパンが癒着関係にあったことは明らかではないでしょうか。
⑤損保ジャパンはビッグモーターに「完全査定レスシステム」を導入
損保ジャパンは、2019年4月からビッグモーターへ修理入庫した車については、査定手続きを一部省略する「優遇措置(完全査定レスシステム)」を導入していたことがわかりました。
これは、保険会社による修理内容の査定を省略し、ほぼノーチェック、つまりビッグモーターが作成した見積り通りに保険金を支払うという仕組みだったようです。
一般的に保険会社は、修理する車両の破損状況と見積り内容を確認し、修理内容・金額等が適正かどうかを査定しています。
査定は「アジャスター」と呼ばれる損害査定人が行い、その方法は、「画像での確認」もしくは「修理先へアジャスターが出向いて破損個所を目視で確認する」という2択です。
アジャスターは、破損状況と見積りの内容を突き合わせ、不要な修理箇所や部品が含まれていないかを確認しています。
現在保険会社は、大部分のケースで画像での確認を行っていますが、車が大破している場合や、傷の形状が事故状況と一致しないような場合等は、アジャスターが立ち会って実際の破損状況を確認しています。
どのようなケースでどの確認方法をとるかは、保険会社それぞれで対応が異なりますが、基本的には保険金を支払うために必ず必要な工程とされています。
しかし損保ジャパンはこの工程を省略し、ビッグモーターから請求された見積りを完全に鵜呑みにして保険金を支払ってきたということになります。
東洋経済には以下のような記事が掲載されていました。
完全査定レスの仕組みについて「BM(ビッグモーター)社におけるプレゼンスアップにつなげる」と、損保ジャパンの社内資料には記されている。
(引用:東洋経済)
適正な保険金の支払いを徹底すべき保険会社が、修理費の査定自体を省略するということに違和感を覚えるとともに、損保ジャパンは顧客志向ではなく完全に営業利益の追求に傾いているという印象を受けます。
既に水増し請求が横行していた時期から「完全査定レスシステム」を導入したため、損保ジャパンがビッグモーターの水増し請求を助長させたと言われても仕方がないような状況だと思います。
なお、東京海上日動と三井住友海上はこのような仕組みは導入していなかったようです。
水増し請求を見抜けなかっただけでなく、不正を助長させるような仕組みを作った損保ジャパンの責任は重いと思われます。
⑥損保ジャパンはビッグモーターの第2株主だった
東洋経済によると、2015年の段階で損保ジャパンはビッグモーターの第2株主だったことがわかっています。
(引用:東洋経済)
画像からビッグモーターの株式の約7%を保持していたことがわかります。
損保ジャパンはその後株式をすべて売却したようですが、ビジネス上での親密な関係は継続していました。
過去に第2株主だったということで、両者に「忖度」があった可能性は高いと思われます。
まとめ
ビッグモーターと損保ジャパンの関係と、癒着が疑われる理由についてお伝えしてきました。
次々と発覚するビッグモーターの不正問題に関与してきた損保ジャパン。
今後の国交省や金融庁の調査から、さらに新たな事実が浮上してくるのではないでしょうか。
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